フィギュアスケート

平昌五輪エキシビション―羽生結弦白鳥、ハビエルマン、BTSの曲、町田樹解説劇場

2018年2月25日

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平昌五輪のフィギュアスケートのエキシビションが2月25日の午前にカンヌン・アイスアリーナで開催され、日本からは男子シングル金メダルの羽生結弦選手、銀メダルの宇野昌磨選手、女子シングル4位の宮原知子選手が出演した。

羽生選手は2014年のソチ五輪のエキシビションでは東日本大震災の犠牲者への想いを込めた白鳥の舞を披露したが、今回はその続編「Notte Stellata」を美しく演じた。宇野選手はスポーティーカジュアルな衣装で「See you again」を披露。宮原選手は歌入りの「アランフェス協奏曲」を表現力豊かに舞った。

ユニークな演目で大反響だったのが、スペインのハビエル・フェルナンデス選手の今や18番の人気キャラであるスーパーマンならぬ"ハビエルマン"の「エアロビック クラス」の超面白いステージだった。腕立て伏せや水をぶっかけられるシーンもあり、開催国韓国の「江南スタイル」っぽい動きも入れるサービスで、エンターテイナーぶりを発揮した。

また、男子シングル17位という通常なら呼ばれない成績だったウズベキスタンのミーシャ・ジー選手は、振付師でもある強みを活かし、開催国韓国で今最も人気のある若手ヒップホップグループのBTS(防弾少年団)の2017年の大ヒット曲「MIC Drop」を、BTSのミュージックビデオさながらのキレッキレの超絶技巧ダンスで披露した。

今回のエキシビションはテレビ東京系で独占中継された。実況解説者は女子フリー競技で抜群の的確さと安定感のある解説をしたベテランの八木沼純子氏、スタジオMC陣の1人は意外と喋り上手な小泉孝太郎氏、スタジオ解説者はずば抜けたうんちくと独特の分析・表現力で他に類を見ない「氷上の哲学者」町田樹氏、という豪華な顔ぶれだった。

羽生選手の白鳥の舞はとにかく美しい

筆者は事前に演目を知らなかったが、羽生選手は登場した際の羽根飾りがふんだんに付いた衣装で、直ぐに白鳥の舞だと分かった。体にピッタリの衣装だったから、とても細身に見えた。

テレビ東京のアナウンサーによると、羽生選手の今回のプログラム「Notte Stellata(星降る夜)」は、2014年のソチ五輪のエキシビションで東日本大震災の犠牲者への想いを込めた「ホワイト・レジェンド」の飛び立つ前の白鳥の舞の続編で、飛び立った白鳥の舞を踊った。

楽曲は前回はチャイコフスキーの「白鳥の湖」からの採用だったが、今回はサン・サーンスの組曲「動物の謝肉祭」中の「白鳥」のメロディーのボーカル入りだった。

指先まで繊細で優美な動きの、どこかはかなげな、極めて芸術的な舞だった。ジャンプはシングルアクセルだけかと思ったら、直ぐにトリプルアクセルを跳んだ。羽生選手は演技終了時に「ありがとう」と言った。

町田樹劇場-過去の名物エキシビションと平昌五輪名場面のディープな解説

テレビ東京では、平昌五輪のエキシビション本番前後に、ソチ五輪の男子シングルおよび団体5位だった「氷上の哲学者」町田樹氏(現在早稲田大学大学院生)のうんちくたっぷりの解説で、過去の名物エキシビション作品集と平昌五輪名場面集の企画を放送した。

今回のフィギュアスケート競技の前後の解説では、バラエティー慣れした織田信成氏や村上佳菜子氏らが大活躍で、現役選手たちと近い彼らのテンポの良い喋りもとても良かった。

彼らと同時代に現役選手として共に活躍した町田氏の場合、滑舌や愛嬌では織田氏や村上氏には及ばないかもしれないが、町田氏には町田氏にしか語れないうんちく、選手の技術面だけでなく表現力や芸術性などにも深く切り込んだユニークな分析・洞察力という強みがある。

競技期間中なら練習でのジャンプの仕上がり具合いや、ジャンプの基礎点や回転不足という技術解説で事足り、その程度なら大きな国際試合を経験した元選手ならほぼ誰でも大差なくできる。だが、改めて後日各選手の演技を深堀りするような企画では、まさに町田氏が適任だ。

過去の有名エキシビション作品集

町田氏はフィギュアのエキシビションについて、「選手の個性」や「素」が出るという醍醐味を述べ、「スケーターの側に知性と創造力そして実行する勇気さえあれば、メッセージを世界中に発信することができる」と述べた。

メッセージ性という意味では、羽生選手の2014年のソチ五輪でのエキシビションの「ホワイト・レジェンド」と今回の続編「Notte Stellata」の東日本大震災の犠牲者追悼も、該当する。VTRではソチ五輪のエキシビションで「ホワイト・レジェンド」の演技の映像が流れた。町田氏は、羽生選手にとって「白鳥を滑るのは彼の目標の1つだったと思う」と推察していた。

また、2002年のソルトレークシティー五輪のエキシビションで、サラ・ヒューズ選手が2001年9月11日のアメリカの「911・同時多発テロ事件」の犠牲者追悼の舞を、花束を添えて演じた映像も紹介された。

アイスショーならではの演出としては、2006年のトリノ五輪のエキシビションで、ロシアの金メダリストのプルシェンコ選手が氷上に立つバイオリニストとコラボした「トスカ」の映像も紹介された。町田氏に言わせれば、「『トスカ』と言えばプルシェンコというくらい、彼の代名詞」とのこと。

トリノ五輪の荒川静香選手のエキシビションの「You Raise Me Up」や、ソチ五輪の浅田真央選手のエキシビションの「スマイル」の映像も流れた。町田氏は荒川選手の「You Raise Me Up」やフリー楽曲「トゥーランドット」は「今日の日本のフィギュアスケートを象徴する楽曲」と位置づけ、浅田選手の「スマイル」の演技に込められた万感の想いを推察した。

そして、ソチ五輪のエキシビションで町田氏自身が演じた伝説のエアギター少年「Don’t Stop Me Now」の映像がVTRで紹介されたから、運よくテレビを観ていたまっちーファンは大興奮したに違いない。

町田氏は「今となっては懐かしい映像ですね。これはスター・ギタリストに憧れる少年の夢を表現した作品なんです」と解説し、エアギターの振付については「こうした動きは競技会では転倒扱いになりますから、エキシビションでしかできないエアギターですよね」と述べた。

この日のハビエル・フェルナンデス選手のスーパーマン・キャラのエキシビションについて、町田氏は「スーパーマンのプログラムは彼の代名詞と言えますね」「今の現役選手の中では1番のエンタテイナー」と述べた。また、この日フェルナンデス選手が開催国の韓国のPSYの「江南(カンナム)スタイル」を彷彿させる振りを交えたことについて「即興性も彼ならでは」と称えた。

平昌五輪の名場面を振り返る

町田氏は羽生選手の勝因を「調整力とコーチやトレーナーなどの周囲の組織力」の成果とし、二連覇に「心からおめでとうと言いたいですね」と述べた。

羽生選手のショートについては、2014年から滑り込んできたショパンの「バラード第1番」が、「今までで一番音楽との同調性が高かった」と評した。また、今回怪我で氷上に立てない期間があったが、何年も滑り込んでしっかり身についていた楽曲を選曲していたことが結果的に幸いした、との見方も示した。

宇野選手については、ショートでジャンプの軸が乱れた後も、「冷静にコントロールして持ち直しているのは彼の底力」と称えた。なお、番組では宇野選手はフリー競技とエキシビションの間に一時帰国して練習していた、との情報を伝えた。

田中刑事選手については、町田氏は個人のフリーの冒頭の4回転ジャンプの成功や、インタビューでの今回の貴重な経験の意義を述べていたことを称え、アスリートとして尊敬すると述べた。また、日本のアイスダンスとペアの選手の健闘も称えた。

宮原知子選手のフリーの圧巻の演技について、町田氏は「後半のカタルシス」の部分、つまりアメリカ人の夫に去られて夫を待ち続けた挙句夫が母国で再婚していたと知り死を決意するに至る「蝶々夫人の心情をよく表していた」と絶賛し、ミスがなかったのは「作品を届けることに集中していることが安定感」につながったと述べた。

坂本花織選手については、「シニア1年目でオリンピック6位はすごいことです」と称えた。フリーの「映画『アメリ』より」のプログラムについては、「ネガティブな意味でない子供らしさ」をよく表現できていて、「この五輪で3本の指に入るくらいジャンプの質が高かったと思います」と述べた。

女子シングルで優勝したロシアのアリーナ・ザギトワ選手について、町田氏は「ジャンプの技術の高さ」を勝因とし、具体的には女子で最高難度のトリプルルッツ-トリプルループの成功と、両手を上げるタノジャンプで「一番手のポジションが整っている」ことを挙げた。

エフゲニア・メドベージェワ選手については、「怪我からの復帰後にプログラムを整理して動作が洗練された」「物語を表現することに長けた選手」と評した。

男子シングル4位となった中国の金博洋選手については、町田氏は「彼の4回転ジャンプは絶品」と大絶賛で、「壮大な『惑星』の楽曲がジャンプを際立たせていた」「コミカルな表現力が得意」と評した。

また、アメリカのネイサン・チェン選手がショートでまさかの17位に沈んだ後、フリーで回転ジャンプを6本も跳んで大逆転を図り、5本成功させたことについて、町田氏は「今回の五輪の羽生選手2連覇・日本の金銀と並ぶ、金字塔」と述べた。

町田選手は、ネイサン・チェン選手が「メダルという目標を捨てて、歴史上最も高難度のプログラム」を成功させることにした、との見方を示した。チェン選手自身が今回のフリーで演じたのは、本人も今後2度とできないかもしれない前人未到の高難度プログラムとなった。

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