堂本剛、レイドバック手法を解説/ 幸せというべきなんだろう―叶わなかった夢もあった

2019年2月10日

2019年2月9日のbayfm78「堂本剛とFashion & Music Book」で、堂本剛はリズム打ちのレイドバックのテクニックについて、楽曲「funkyレジ袋」（2018年8月発売のENDRECHERI名義のシングル「one more purple funk... -硬命 katana-」Original Editionに収録）での例から語り始め、異様なグルーブを生む手法として、そのカッコよさや、特に日本人にとっての難しさについて、自身の考えを詳しく述べた。

幸せですか、というリスナーの直球の質問に、剛は「幸せと言うべきなんだろうな」と答えた。剛は「これをやってはいけないということのほうが多かった」「自分の夢とか叶えることとかできなかったし。可能性を潰す毎日、そんなイメージでしかないから」と振り返ったが、「全く幸せじゃないってことではない」とも述べた。

かけた2曲は、2018年8月発売のENDRECHERI名義のシングル「one more purple funk... -硬命 katana-」Original Editionに収録の「funkyレジ袋」と、2008年発売の244 ENDLI-x名義のアルバム「I AND 愛」に収録の「Say Anything」だった。

リズムのレイドバックで異様なグルーブを生む―「funkyレジ袋」の場合

リスナーからシングル「one more purple funk... -硬命 katana-」Original Editionに収録の「funkyレジ袋」のイントロの指パッチンの音がずれている理由を問われ、剛は「これを機会に」と、レイドバックについて、詳しく解説をした。

「ドラムのスネア、『ツッツッタ』の『タ』の部分を、スティック2本でハイハットで『チッチッチッチ』って叩いてて、『タ』のスネアに当たる時の、右利きの人であれば右手のスティックもスネアに落とすんですけど。そうすると『タッタッタラッタ』になるんですけど。『タッタッタッタ』ではなくて」

「こういうので、わざとレイドバックっていう、後ろの方に､3拍目だけとか。『タ』の時にちょっとだけレイドバック、わざと。『タ』の後の『ツ』がちょっと速くなるって言うんですかね。遅くしちゃう、『タ』を。そういうグルーブをわざと。リズムこねてく感じなんですけど」

「スクエアに、テンポに忠実に『ツッツッタッツ』ってやるのももちろんあるんですけど。何か１つの楽器だったり、何か1つのポジションがレイドバックしてるっていうことで、異様なグルーブを生むっていう方法があるんですよね」

「競技でも何でもいいんですけど、ちゃんと細かく的確にやるタイプの人と、ルーズに真逆に、感覚でやりますって人と、両方どっちもという人と、いろんな人がいることで、そのチームの空気が変わってくるっていうか」

「本当に緻密な人ばかり集めてしまうと、カチカチしたものになるし。ルーズすぎる人ばかり集めると、めちゃめちゃルーズで自由すぎるものになる。すべてが自由になることでいい時もあるけどね」

「でもやっぱり、道しるべがある状況の中で、誰かが1人好きなことをしているのが見えるっていう。こういう指鳴らすやつとかも、ちょっとだけずらす。よく『もたる』って言い方するんですけど。たまに入るだけでグルーブが変わってくるって言うか。ちょっとずれてるカッコよさっていうんですか」

ブラックミュージックに多いが、日本人には難しいかもしれない

「それがやっぱブラックミュージック、やっぱ多いかなっていう。ブラックミュージックにそれが多いからそれをマネしているっていう方法論ではなくて。そのルーズさがファンキーって言われたり、ブラックミュージックって言われるものにつながる」

「だからそういう、ルーズさだったり、おおらかとか、自由とか、適当とか、いろんな言い方あると思うんですけど、そういうものがやっぱり日本人には少ないと思うんですよ。ちゃんとこの仕事やんないと、真面目にここまで合わせないと、みたいなことで、音楽作る傾向があると言うか」

「でもその、ファンキーって言われたり、ファンクって言われたり、ソウルだねみたいな、ブラックミュージックみたいなこと言われている一つのポイントは、日本人には到底難しい、ナチュラルに自由だったり適当だったり、みたいな感覚だったりみたいな、そういうものがDNAにやっぱりナチュラルにはないから」

「それを目指さなきゃいけない人もいるだろうし。日本はそういう社会ではそもそもないから、ちゃんとやりましょうみたいな感じになっちゃうから。だからファンクとかが売れない、そういうふうなことにつながるだろうな、と僕は分析しているんですけど」

「『何でずれてんの？　ずれてるから合わせた方がいいんじゃないですか？』　ずれてるってカッコいいやん、そういう概念が少ない国やから。なかなか難しいんですね」

「ドラムのスネアもハイハットもジャストタイムではあるけれども、キックだけレイドバックしたりとか。キックだけがすごく後ろにもたったりするだけでも、また変わってくるし。それに合わせてベースもちょっともたってたりとか。みたいなことをやることで、無意識の中で意識的に楽しんで、でも最終的に無意識でそれを楽しむみたいな」

「音楽を聴く聴き方として、とても難しいことかもしれない。気になること、気にならないようにするっていうかね。僕は別に気にならないけど。そういう音楽の聴き方って言うか、作り方、主張の仕方と思ってるだけなんで。すげえずれてんなっていう聴き方はしたことはないですけど」

「むしろ、ずれてたり、レイドバックしてる感じの演奏を聴くと、おお～、カッコいいと思っちゃうから。だから、そういうところが、たぶんこの国に住んでいる人たちにはほんと少ない感覚なんだろうな、とずっと音楽をやってて思いますけどね。どっちがいい悪いの話ではなくて」

「何でずれてるのかなと思った時に、それを探求心で探って行ってみるみたいな。他の曲も聴いても、この曲もこの楽器だけずれてんな、わざとずらすことでグルーブってできてんのか、みたいなことだったりね」

「そうすると、昔に遡って行って楽曲を聴くと、ベースが大きい楽曲が多いなってことに気づいてったり。最近日本で出ている音楽のベース、めちゃめちゃちっちゃいと気づいたり。ベースもっと聴きたいなって思う人がいたり、いろんなことに繋がって行くというか」

「音楽を今はいろんな形で聴けるから便利ではあるけれども、それは便利なだけであって、音楽を聴いているかって言えば聴いていない。自分が過ごしている空間にただ漂わせているだけというか。もっと音楽と向き合って音楽を聴くっていう状況が戻って来るといいなと思います」

ここで剛は2018年8月発売のENDRECHERI名義のシングル「one more purple funk... -硬命 katana-」Original Edition収録の「funkyレジ袋」をかけた。

大事なお守りをなくしたら、守ってくれたと考える

リスナーから募った一行質問で、大事なお守りをなくした娘に何と声をかけるべきか、との問いに、剛は助けてもらったと考えるようにしている、と答えた。

「僕は大体こういう時はね、助けてくれたんだねっていうことにしてます。自分の大切なものが壊れたり、傷ついたり、なくなったり。守ってくれたんやろなって、感謝しないとな、とか。気をつけないとな、とか、そんなふうに切り替えるようにしています。プラスに変えて行かないと、何も始まらない」

爪の手入れについては、剛はギターを弾くから、きれいに整えているそうだ。

「僕ギター弾くから、爪の感覚って大事なんですよ。家に爪やすりとか、あとメークさんが爪やすりを持ってたりとか。テレビ見ながらシャーって、暇つぶしに自分でやって、これぐらいやったらギター弾きやすいなって保っている状態なんですよ」

「きれいなカーブを描きたくなるんですよ。ちまちました職人みたいな仕事が好きやから、本来。何かを削る職人になればよかったなと思うぐらい。陶芸とかもそうですが、削ったり形整えたりするのが好き」

自分は幸せと言うべきなんだろう―叶えられなかった夢もあった

幸せですか、という直球の質問に、剛は幸せと言うべきなんだろうな、と答えた。ファンはもちろん、反語的な面もあると受け止めているが、全面的に不幸せということでもない。

「どっちかなと思った時に、まあ幸せと言うべきなんだろうな、という答えになっちゃうなっていう。何を持ってね、幸せ・不幸せかって。自分で決める幸せ・不幸せがあって、第三者が決める幸せ・不幸せがあるから。だから、幸せと言うべきなんだろうなっていう」

「これが僕の人生かな。わがままとか子供っぽいっていうことの話ではなくて、自分は将来こういうことをしてみたいなとか、いわゆる社会に出る前に、自分が思うことだったりね、夢ですよね、それを現実にしたいなと思うことを含めてですけど、それが叶ったかっていうと、叶ってないので、そういう意味では、幸せというべきなんだろうなってことになっちゃう」

「これをやってはいけないということのほうが多かったですからね。それを守りながら人間らしくいようってことが、まず難しかったりね。自分の夢とか叶えることとかできなかったし。可能性を潰す毎日、そんなイメージでしかないから」

「でも、そんな中でも、やらないと人生やってられへんなみたいなところもあったり。それで今があるみたいな。そこに多くの人が関り助けてくれたことによって、今があるからね。そこにはとてもとてもとっても感謝しているけれども、自分一人の話、たった一人にピントを合わせた時に、幸せと言うべきなんでしょうねって感じになっちゃうから」

「これだけ多くの人々の前に立ち何かをする人生っていうのが、僕が望んでいたものでも別にないからね。でも、そういう役割を頂いて、今になる。だから、自分がこれで本当に向いてるなとか、こうだああだなっていうふうな気持ちを持続させてできている仕事かって言ったら、僕はそういうわけではないからという意味で、幸せと言うべきなんでしょうね、になっちゃうのかな」

「たとえば今言ったみたいに、全く幸せじゃないってことではないけどね。あの日は楽しかったなとか、あの時は愛に満ち溢れてた一日やったな。そういう日もありますからね。でも、そういう日もあったということが、とても自分を強くさせたり優しくさせたりするんですよね。そういう日があったということが、幸せだと言うべきだなと」

剛はリスナーに対して、語りかけた。「自分が自分らしくいれることが一つ大きいことだと思うんでね。みなさんの人生もね、自分らしく、そして幸せだなと少しでも言えるね、そんな人生にもっともっとなっていくべく、このラジオでいろんな話をみなさんと共有できたりすればいいなというふうに思っております」

最後に剛は244 ENDLI-x名義で2008年にリリースしたアルバム「I AND 愛」収録の「Say Anything」をかけた。

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