SixTONES『共鳴』初週40万枚、前作比大幅減で浮かび上がった課題/ そもそも誰がライバルか？

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・今作6thシングル『共鳴』の売上が前作比で大幅減となった理由
・今後の曲選びや売り方の課題―そもそも誰がライバルか？
・有名アーティストに楽曲してもらうことのメリットとデメリット
・特典商法の強化は、今のSixTONESには不要？
・世界市場で勝つために必要なことは？
・商品情報

SixTONESの2022年3月2日（水）発売の6thシングル「共鳴」の初週売上は40万枚ラインをファンが死守し、一般的には申し分のない高水準だった。

ただし、初週売上は前作比では約10万枚の大幅減で自己最低となり、今後の「曲選び」「どう売るか」「そもそも誰がライバルか」の課題を浮き彫りにした。

SixTONESの6thシングル「共鳴」は、ビルボード・ジャパンの2022年2月28日～3月6日の週の週間シングル・セールス・チャート"Top Singles Sales"で、40万2,093枚を売り上げて断トツ1位となった。

ただし、初週売上は同じ3形態売りだった前作の2021年8月11日発売のKing Gnu常田大希提供曲の5thシングル「マスカラ」の50万4,232枚から約10.2万枚の大幅減となり、自己最低となった。

ビルボード・ジャパンの売上の数字は通常ルート販売の9割以上をカバーしているサウンドスキャンジャパンのPOSバーコード読み取りデータに基づいていて、特殊な場所（イベント会場や臨時通販サイトなど）での販売がなければ、かなり信ぴょう性が高い。

一方、オリコン調査による6thシングル「共鳴」の初週売上（2022年2月28日～3月6日）は推定40.0万枚で断トツ1位だったが、こちらも前作5thシングル「マスカラ」の49.6万枚から大幅減で、自己最低となった。

オリコンの売上の数字は全国20,186店の調査協力店の実売データを元に全国の売上を推計しており、イベント会場での大量購入では形態に関わらず1人3枚までしかカウントしないなどという「"積み"の間引き」も行っている。

ジャニーズ以外のボーイズグループでは、オリコンとビルボード・ジャパンの売上の数字に大きな差が出ることも珍しくないが、何故かジャニーズの場合は両者の売上はほとんど差がない。

結果、今作6thシングル「共鳴」の初週売上が前作比で激減したことが確定した。

今作6thシングル『共鳴』の売上が前作比で大幅減となった理由

6thシングル「共鳴」の初週売上が前作比で激減しそうだったことは、既に初日売上の段階で明らかだった。その時点でも幾つか挙げた売上減の理由を改めて整理すると、以下の通りだ。

・5thシングル「マスカラ」がKing Gnu常田大希提供曲だったため、King GnuのファンやKing Gnuの音楽に関心のある層が5thシングル「マスカラ」の購入に動いたが、その購買層は6thシングル「共鳴」を買わなかった。

・楽曲「共鳴」は難しい曲で、一般大衆から新たなファンを獲得することが難しかった。

・「共鳴」のミュージックビデオ（MV）は目がチカチカして見づらく、CDシングル「共鳴」3形態のうちSixTONESの顔写真が掲載されているのは2形態のみだが、その2形態のジャケット写真は暗くて魅力に乏しかった。結果、MVもジャケ写も販促効果に乏しかった。

・6thシングル「共鳴」が2形態買えば全曲を網羅できる点は前作5thシングル「マスカラ」と同じだったが、3形態買わなければ網羅できなかった前々作4thシングル「僕が僕じゃないみたいだ」の初週売上（ビルボードは43万6,911枚、オリコンは43万553枚）と比べても、今作6thシングル「共鳴」の初週売上は減少している。

今後の曲選びや売り方の課題―そもそも誰がライバルか？

今作6thシングル「共鳴」の売上減は、今後のSixTONESの曲選びや売り方での課題を浮き彫りにしている。

もっとも、初週売上40万枚は、昨今の音楽業界においてはかなりの高水準で、一般的には申し分ない大人気と言える。だから、現状に満足し、このままでいいと思っている人は、以下を読む必要はない。

ただ、SixTONESが単独で発売したCDシングルとしては、同じ3形態販売だった（ただし今作と違って3形態買い揃えなければ全曲網羅できなかった）2020年7月22日発売の2ndシングル「NAVIGATOR」の初週売上（ビルボード・ジャパンが65万2,277枚、オリコンが62.2万枚）がピークだった、という現実がある。

筆者は具体的な課題を整理していくうちに、そもそも大前提として、ジャニーズ内競争や国内市場のことだけを考えればいいのか、それとも海外進出まで見据えて考えるべきか、の視点の違いによって、結論が違ってくることに気づいた。

まず、SixTONESのジャニーズ内でのライバルは、王道アイドル路線でダサ・カワイイ衣装が特徴の、なにわ男子ではない。

歌が得意なSixTONESのライバルは、同年代およびやや年下の、パフォーマンスに強みのあるグループだ。具体的には、ダンスが得意なSnow ManやKing & Prince、そしてジャニーズJr.のTravis Japanだ。

しかし、本気で海外市場に打って出るつもりなら、競わなければならない相手としては、先に世界進出に成功しているK-POP勢を、外すわけにはいかない。なお、現在のところ、海外のオーディエンスはジャニーズ忖度とは無関係だし、海外の日本人以外のジャニーズ・ファンは"ニッチ"（niche、特殊分野・隙間産業）なオタクであり、王道ではない。

このため、以下の課題についての議論も、ジャニーズ内および国内市場での対策と、海外進出での対策は、全く違ってくる。

有名アーティストに楽曲してもらうことのメリットとデメリット

まずは、「曲選び」という課題だ。5thシングル「マスカラ」は、有名アーティストに曲提供してもらうことで、売上を一時的に大幅に増やすことができた。

このやり方には賛否がある。ぶっちゃけ、ジャニーズ内で歌唱力が高いと評価されているKinKi Kidsは、多くのシングル表題曲を有名アーティスト・作家から提供を受け、自分たちなりの表現で見事に歌いこなすことで、デビューから25年間、全シングルの初週1位を維持してきた。

では、このやり方をSixTONESも採用することは、正しいだろうか？ avexの松浦会長の発言によると、曲の著作権は曲を書いた人に手厚い。また、有名人なら売上の分配も多めの要求になるかもしれないから、歌っているSixTONESの利益は少ないかもしれないが、それはさておき･･･。

問題は、「有名アーティストのおかげで売上が伸びたわけで、SixTONESの実力ではない」とみなされることだ。また、次のリリースで有名アーティストからの曲提供がないと、売上が落ちる可能性が大きくなる。

それでも、一時的に売上を伸ばしたいなら、有名アーティストからの曲提供は、国内的には、今も有効な方法だろう。

しかし、SixTONESが世界、具体的にはアジアだけでなく米国市場も見据えた世界進出で成功したいなら、有名アーティストから曲提供された場合、売れても有名アーティストのおかげと思われるだけだが、有名アーティストのPRがあっても売れないケースもある。

嵐が米国の超人気アーティストのブルーノ・マーズ（Bruno Mars）に書いてもらった英語詞曲「Whenever You Call」は、米ビルボードのメイン・シングル・チャートBillboard Hot 100にチャートインできなかった。甘くはない。

日本勢よりはるかに先に、世界進出で成功したBTSをはじめとするK-POPの人気ボーイズグループでは、メンバーが楽曲制作に参加するのが、今のトレンドだ。BTSは欧米の人気アーティストとのコラボ曲もあるが、その場合もBTSメンバーが作詞または作曲に参加していて、丸ごと曲提供してもらうわけではない。

有名アーティストに丸ごと曲提供してもらえば、世界進出で成功できるだろうという発想は、昭和～平成時代の遺物だ。

特典商法の強化は、今のSixTONESには不要？

なお、何はともあれCDの売上を大きく増やしたいなら、一番手っ取り早い方法は、イベント特典を付けることだ。

コロナ禍前のジャニーズの新人デビューにも採用されていたような、抽選でハイタッチ会に招待するなどの接触イベント特典が最強だ。また、コロナ禍ではK-POP系のアイドルの多くが採用しているように、1対1（またはアイドル2～3人ユニット対ファン1人）の顔が見える個別ビデオ通話への抽選招待が効果的だ。

だが、個別ビデオ通話にはプライドが許さないジャニーズが採用してきたイベント特典は、全形態購入でオンライン・ライブイベントに招待、というものだった。これが、Hey! Say! JUMPやSexy Zoneのテコ入れ策として効果を発揮した。

しかし、SixTONESの売上水準は申し分ない高水準だから、今イベント特典を導入する必要は全くない。

もっとも、毎回同じようなクリアファイルの先着外付け特典には飽きた、という不満の声も一部のファンから出ているので、先着外付け特典にもう少し工夫があってもいいかもしれない。

世界市場で勝つために必要なことは？

SixTONESの強みは、京本大我を筆頭とする高い歌唱力だ。グループ全員が、ジャニーズ内では歌唱力が高いほうだから、たとえば「共鳴」のように、歌割平等主義を採用しても、ジャニーズ内ではKinKi Kidsと並んで「歌が上手なグループ」と称賛されることに変わりない。

しかし、ジャニーズ外の国内音楽市場、さらに世界市場に出てしまえば、京本大我レベルの歌唱力のボーカリストは山ほどいるし、それ以上の化け物的才能のあるボーカリストがいるボーイズグループも、幾つもある（例: EXOのベクヒョン）。

SixTONESが今のボーカル力だけで、世界で勝てると思うのは、甘いと言わざるをえない。歌割平等主義など、世界で勝つためには、論外だ。一番上手な歌い手が一番難しい聴かせどころを担当し、歌があまり上手くないメンバーの担当箇所を少なくするのが、当たり前だ。

ダンスに関しては、ジャニーズ内で見ても、SixTONESはSnow Man、King & Prince、Travis Japanにはかなわない。

だから、カメラワークでダンスが最も上手な1～2人を中心に映してもらって、不得意なメンバーは後ろで目立たないようにするのはもちろん、SixTONESの強みであるべき歌やラップなどで差をつけるべきだ。

歌・ラップ・ダンス・ビジュアルは必須条件だが、それだけで世界で成功できるわけではない

では、歌やラップやダンスのレベルが高くてビジュアルが良ければ、絶対に世界で成功できるだろうか？

歌やラップやダンスのレベルが高くてビジュアルが良いことは、世界で売れるためには当たり前のことだが、それだけで世界で売れる保証は全くない。

そもそも、BTSをはじめとするK-POP人気グループがどうやって、世界中に巨大なファンダムを築いたと思う？

彼らは唯一無二の才能と個性を備えているだけでなく、SNSや独自の世界を網羅するプラットフォームを駆使して、世界中のいろんな言語のファンが共通して楽しめるコンテンツ（字幕入りもしくは自動翻訳機能付き）を頻繁に供給し続け、いろんな国からCDだけでなくグッズやチケットも購入できるシステムも備えている。

こういう総合力が、BTSが世界に巨大なファンダムを築くことができた、大きな成功理由となっている。

たとえば、SixTONESは世界中の人が楽しめる（音楽・ダンス系やバラエティー系の）動画コンテンツを、毎回英語や中国語の字幕付きで、最低週1回YouTubeにアップできるだろうか？

ドラマや映画の仕事で忙しくて無理･･･なんて言っているようでは、世界進出の本気度に欠けると言わざるをえない。

なお、英語力については、ハーフのジェシーが流暢に話せるのはSixTONESの強みだ。ただ、ジェシーは日本の学校（小・中・高）で教育を受けてきたので、今後は記者会見での質疑応答など、より高度な語彙での英語の表現力を身に付けておくといいだろう。

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商品情報

*SixTONESの2021年8月11日（水）発売の5thシングル「マスカラ」表題曲は、King Gnuおよびmillennium paradeの常田大希による提供曲の切ないラブソング。シングル「マスカラ」はDVD付き初回盤A、DVD付き初回盤B、CDのみの通常盤（初回仕様有）の3形態で販売。初回盤Aのカップリング曲は「Make Up」で、DVDには「マスカラ」のミュージックビデオ（MV）、MVメイキング、MVソロアングルの映像を収録。初回盤Bのカップリング曲は「フィギュア」で、DVDには「フィギュア」のMVを収録。通常盤のカップリング曲には「フィギュア」「Lost City」「僕が僕じゃないみたいだ（Dramatic Rearrange）」を収録。通常盤初回仕様分には20Pフォトブックレットを封入。